夕方まったりしていると、ドアのチャイムが鳴った。
「引っ越してきたので、ご挨拶をと思いまして…」
やけに礼儀正しい若者だなぁと関心しつつも、別に最近同じフロアで
引越しがあったわけでもないよなと思いながら出ると、
背の高い貧相な男が立っていた。
手に洗剤とジャイアンツのタオルを持って。
あぁしまった、と思うも後の祭り。
「つい一ヶ月ほど前に引っ越して来まして、ご挨拶が遅れて申し訳ございません。」
とか言いながら、足はドアをロックしている。
何階かと聞いたら「 3 階」だと(ウチは 8 階)。
お前は 1 ヶ月以上かけてマンションの全住民に挨拶周りしてるのかと問い詰めたくなった。
さらに、いきなり「自分は新聞奨学生だ」みたいなことを言い出しはじめ、
苦学生ならこんなところ住まないだろうと辟易しながら対応していると
突然、「ところでお笑いは好きですか?」とか抜かしやがった。
「実は僕、お笑いやってまして…」
ちょっと引っかかったので色々聞いてみたところ、
・ワタナベエンタテインメント所属
・テレビはほぼ全局出たことがある
・次に出るのはオンエアバトル(通算成績は 12 /13)
・今度安田生命ホールでライブを行う
・BS フジにもよく出る
・名前は“チョウシンジュク(?)”
・バンドもやっている
などなどの事実(?)が判明。グループの写メも見せてもらった。
ひとしきり食いついた後、向こうが段々と勧誘モードに戻り
土下座しながら最後の嘆願に出てきた。
「今日がノルマの報告日なんです。ビール券も 5 千円分渡しますし、
色々な優待券もあげます。ライブにも招待します。
ここは一つ信頼関係で 3 ヶ月だけ契約して下さい。」
これに対し、
「あなた、信頼関係とかいうならむしろ契約できないよ。会って 15 分で信頼も何もないでしょう。
あなただって読みもしないものに何千円も払える?契約できません、ごめんなさい。」
と言って、ようやっと諦めさせた。
部屋に戻って早速検索してみると、本当にワタナベエンタテインメント所属の
“超新塾”というお笑い芸人がいた。
向こうが言っていた情報も全て当たっていた。
グラサンをかけていなかったが、多分“イーグル”か“ドラゴン”か“マンモス”だと思われる。
これから、超新塾を応援していきます。